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Project no.1
​幽玄を纏う川湊 ー岐阜県川原町における町を巻き込んだ鵜飼ミュージアムの提案ー

 敷地は,岐阜県岐阜市川原町。この町は,長良川を挟んだ両側町として舟と水辺の文化により栄え,鵜飼を取り巻く行程と共に構成されてきた。しかし,近年の川原町は,広範囲で伝統建築の保存と再現計画を進めており,形を再現しただけで中身の伴わないテーマパークへと変貌しつつある。

​ 鵜飼関係者が利用する路地は「せこ道」と呼ばれる。本計画では,鵜飼の営みを示すミュージアムを中心とした諸施設を挿入することで,途切れたせこ道同士の連続化を企図し,長良川沿いの鵜飼河戸一帯をネットワーク化,町と鵜飼との関わり方を再編する。

【制作テーマについて】

 町並みの保存,朽ちた建物の再現が進む川原町で,町を単なる観光のためのディスプレイとするのではなく,建築的アプローチによって鵜飼との関わり方からデザインし直すことが出来ないかという思いから,この計画が動き出した。

​ 本計画を通して,美しい長良川の文化が,未来に紡がれていくことを願っている。

幽玄を纏う川湊 -岐阜県川原町における町を巻き込んだ鵜飼ミュージアムの提案-

01.  岐阜県岐阜市川原町 ー 鵜飼と共に構成された町 ー

​ 敷地は,岐阜県岐阜市川原町。この町は,長良川を挟んだ両側町として,舟と水辺の文化により栄え,鵜飼を取り巻く行程と共に構成されてきた。しかし,近年の川原町は広範囲で,伝統建築の保存と再現計画を進めており,形を再現しただけで中身の伴わないテーマパークへと変貌しつつある。それが,町と鵜飼との関係性に切断された状況を生んでいる。

02.  場の記憶の継承

​ 長良川の,限定された時期の,限定された時間にだけ展開される鵜飼。長く継承されてきた,その「はかなさ」を未来へと繋ぎ,そのことによって,場の記憶を継承することを目指した提案である。鵜飼関係者が利用する路地は「せこ道」と呼ばれる。本計画では,提案する諸施設を挿入させることで,せこ道の連続化を企図する。そして,川沿いの鵜飼河戸一帯をミュージアムを中心にして,鵜飼との関わり方からデザインする。

03.  水音と風音のみが残る幽玄の世界

 構想の中核である鵜飼ミュージアムは,闇夜に儚く消えてゆく鵜飼の世界を内包している。

​ 本計画では,鵜飼漁の動線や,その行程を読み解きながら,鵜匠と鵜の一生と,その営みを巡る空間体験を持ち込んだ。また,朽ちた鵜飼漁具の収蔵・展示や,現在も使われている鵜飼漁具の出し入れが行われる施設としての役割も担う。長良川との大きな高低差を,地形と一体化した斜面で繋げることによって,長良川と鵜飼を臨む,新たな眺望点を創出する。古来より続く川湊が,鵜飼の営みと呼応する構えを取り戻し,もう一度,幽玄の世界を纏うことを目指した。

04.  Diagram  ー 川湊を構成する手法 ー

05.  全体構想  ー せこ道を繋げ,鵜飼の営みと呼応する ー

06.  鵜飼ミュージアム  ー 鵜匠と鵜の一生を巡る空間体験 ー

① せこ道の空間を連続化し,鵜飼河戸へと訪問者を導く。訪問者は,まず,せこ道を抜け長良川の風景を見る。野生の海鵜が捕獲され,川へと住み替えを行う際,初めに長良川の風景に晒すのだという鵜匠の話を聞いて用いた,ミュージアムの導入部分。

② 「時の間」は全体を半外部空間とし,現在も使われている鵜飼漁具の出し入れや,役目を終えて朽ちた鵜舟が収蔵・展示されている。この場所では,差し込む光のもとで朽ちた鵜舟が輝き,訪問者の視線は長良の空まで抜けていく。

③ 「カタライの間」は,常設展示棟の導入部分。鵜は,鵜匠の家の中庭に設けられた鵜小屋から長良川を見つめ,日々の漁を待つ。そのことを平面上の配置計画に取り入れ,鵜の小屋からは断面上で川への抜けを設けつつ,訪問者へ次に訪れる空間を暗示する。

④ 「静寂の間」を構成する石垣の空間が,カタライの間へと伸びていく。そうして事前に暗示された空間へ,回り込むようにしてアクセスすることで,訪問者は,気持ちを昂ぶらせ,漁へと向かう鵜匠たちの精神を感ずるのではないだろうか。

⑤ 「激流の間」。川面が暗闇に染まる頃,鵜は鵜匠と呼吸を合わせながら,その野生の本性を現す。建物を突き破り外へと流れ出す,激しい水音を鳴らした水盤の上を,床スラブが蛇行するように駆け抜けていく。訪問者には,その激しい水の存在が足裏を通して伝わって来る。

⑥ 「篝火の間」。鵜飼の終盤,6隻の鵜舟が隊列を組み,浅瀬に追い込んだ魚を狩り取る「総がらみ漁」。川を燃やす激しさと,篝火から千切れては消えてゆく炎の儚さを,天井と凹凸のある壁面との隙間で粉砕された光が水盤で反射し,さらに内部の石垣に反射を重ねることで,篝火が放つ儚い炎の移ろいを表現している。

千切れては消えてゆく,儚い炎が川面を燃やす。川湊が「水音と風音のみが残る幽玄の世界」を纏う。

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岐阜県 岐阜市 川原町の今

​設計の過程

​岐阜県岐阜市川原町  ー 奥美濃の山々と清流と共に生きる心 ー

【掲載情報】

● 関西大学発行誌「KURA」掲載

● 近代建築6月号別冊 卒業制作2015 掲載

● AIJ日本建築学会 近畿支部 第64回卒業設計コンクール 掲載

● JIA日本建築学会 2015年度卒業設計コンクール 掲載

​● Diploma × KYOTO 2015 掲載

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