
Project no.4
Rudolph・M・SchindlerによるOliver's houseへのアトリエ増築提案
Rudolph.M.Schindlerの設計した1920-50年代の建築作品を分析し,「空間の連続性」と「外部環境の空間化」という2つのコンセプトを発見した。
本提案は,1933年にロサンゼルスの斜面地に竣工したOliver's Houseに,建築家のためのアトリエの増築計画を行ったものである。アトリエを既存部の屋上に増築し,空間の連続性を断面方向の広がりによって継承した。建築家が,日常の生活から切り離されることなく設計活動を行える点に魅力が生じると考え,既存の生活動線を延長しながら,アトリエにアプローチ出来るよう企図した。
【課題趣旨】
担当する建築家の作品分析を行い,そのエッセンスに基づいた増築案を設計することにより,空間構成の分析と,それに基づく設計への変改の可能性を探る。
分析・設計対象とする建築作品の居住者は建築家と想定し,その建築家のアトリエ(スタッフは4名程度)を設計する。所用室は,所長室・スタッフ製図室・打ち合わせ室・書庫・トイレは必須。その他は,各自設定のこと。敷地は,該当敷地内もしくは隣接地(形状や勾配は各自設定のこと)とする。主屋との関係を考えて増築を行うものとする。
Rudolph・M・SchindlerによるOliver's houseへのアトリエ増築提案

01. Rudolph・Michael・Schindler

Rudolph・Michael・Schindlerは,ウィーンに生まれ,ウィーン王立工科大学で構造学を学び,1910年からウィーン造形芸術アカデミーに入学し,芸術と建築の両方を学んだ。そして,オットー・ワーグナーや,アドルフ・ロースにも師事し,自ら独立するまではフランク・ロイド・ライトの下で働いた。1920年にライトの「バーンスダール邸」の設計監理のためにロサンゼルスに赴き,同地にて1921年に独立する。その後,死去する1953年まで,自らが設計した「シンドラー・チェイス邸」に住みながら,住宅の設計を主に,建築家としての活動を展開することとなる。リチャード・ノイトラとともに,アメリカの近代建築を先導する。
形式性を追い求めた周囲の建築家とは違い,シンドラーは生涯,形式性というものを否定し続けた。乱雑とも思われる自由な建築の中に,世間では評価されていない素晴らしい住宅作品が多く見られる。
02. 生涯をかけて形式性に抗い続けた建築家の代表作

オリバー邸を中心として,シンドラーが1921年ー50年代までに手がけた住宅作品の空間構成を分析する。
03. Oliver's house (1933)

オリバー邸は,1933年に竣工する。建物は1層で,前面の通りに面して駐車場が設けられている。敷地対して斜めに配されたL字型の平面プランによって,3方向への眺望が確保されるだけでなく,平坦な部分を最大限利用し,裏側にはパティオが作り出されている。通りの表と裏の関係をうまく取り入れた計画がなされている。子供室の屋上にはルーフ・テラスがあり,寝室を増築できるよう計画していたが現実には至っていない。
04. Micheltorena St, Los Angeles, CA, USA

オリバー邸は,シルバーレイクの西側に位置し,建物の西側遠方にはロサンゼルス 平野を見渡せるものとなっている。土地全体が斜面地となっているため,眺望に対する配慮と,地形を動線上に取り込むことによって,地形と呼応した豊かな空間性が創出されている。
05. Oliver's houseの空間構成分析

06. 空間構成の分析から,既存棟の特性を強調するよう意図

07. 増築案の詳細

アトリエからは,眼下に広がるロサンゼルスの街並みを俯瞰できる。周囲を木々に囲まれたワークスペースを実現。
