Project no.7
流れ,留まり,地域を結ぶ,思い出を運ぶ駅舎
兵庫県川西市に位置する,能勢電鉄・山下駅の現駅舎を「思い出の生まれる駅」へと改修する提案である。地域の中に巨大な障壁として存在する現駅舎に対して,3つの設計コンセプトを基にした改修提案を行った。
【3つの設計コンセプト】
① 大きく集まれる場所と小さく集まれる場所を融合させ,誰もがお気に入りの空間を見つけられる駅舎を目指す。
② 高架の持つ量塊を,多様な大きさの特徴ある空間を挿入することで細かく分節し,地域にとって親しみやすい空間へと変えていく。
③ 敷地の持つ高低差を床スラブによって連続化させ,地域の中に人の流れを創出する。
【募集要項(コンペ)】
「思い出の生まれる駅」
近年,高齢化の進む郊外住宅地の駅は,利用者の減少傾向にあります。駅を拠点とした生活から,自家用車を利用して幅広く動き回る生活へと変化しています。そんな中にあっても,駅は無くてはならない生活の支えになっていることも事実です。
路線の高架化が進み,駅舎と呼べるものが無くなってきています。また,利用者の減少からか,駅前店舗の種類や数も減少し,魅力的な駅前に出会う事も稀になってきています。
そこで,能勢電鉄の暮らしを豊かにする拠点駅,山下駅で,今後の豊かな郊外生活を演出する,地域の「サード・プレイス」「ハレの場」のある魅力的な駅舎,駅前空間の提案を募集します。 (公益財団法人 都市活力研究所 学生アイデアコンペ募集要項より記載)
流れ,留まり,地域を結ぶ,思い出を運ぶ駅舎
兵庫県川西市に位置する,能勢電鉄・山下駅の現駅舎を「思い出の生まれる駅」へと改修する提案である。地域の中に巨大な障壁として存在する現駅舎に対して,3つの設計コンセプトを基にした改修提案を行った。
01. 駅舎改修の,"3つの設計コンセプト"
02. ハレの場を持つ駅舎が,既存の量塊を溶かし,地域の中に横の繋がりを生む
山下駅の高架化により,南北に伸びる谷筋に沿って,地域を東西に分離する巨大な量塊が生まれた。東と西に山を持つこの土地は,谷筋を間に持ちながら向かい合う構えを持っている。動線上の要に位置する現駅舎を,東西の地形を解 消ながら,グラウンドレベルで結ぶ構想を提示する。「山と谷」が複雑に絡む土地の性格を拠り所にし,高架空間をサードプレイスを内包したハレの場へと転換する。
03. 山と谷の地形を拠り所にする
04. 東西2つの広場を流動的に繋ぎ,町の街路と土地の起伏を取り込んだ回遊空間を創出する
05. 高架の持つ重厚さと,起伏ある断面が,様々な単位のまとまりを生む
ふたつの広場が高架を超えて呼応し,人々の行き交う回遊性を生む。電車を使って通勤するサラリーマンや,通学中の学生が憩いの時間を過ごせる場を創出する。これまで壁面により閉ざされていたホーム上の空間が開放され,地域の中に新たな視点場を生み出す。駅舎が日常の視点に新たな一面を提示することで,訪れた人が土地に思い出を刻み,自分の住む町を再認識出来るのではないかと考えた。
デッキ上の空間と駅前空間が緩やかに交錯する。500mm〜1000mmといった微細な段差を高架下空間に挿入し,少数で訪れた人でも,より多くの人々で賑わうまとまりの中に,自然と参加している感覚を得られる場を生み出す。